SIMロック解除化の先で期待したい端末|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

今夏、わが国のケータイ業界には色々な動きがありましたが、とくに筆者が着目しているのが大手3キャリアの新料金プランへの移行と、業界におけるSIMロック解除に向けた動きです。そしてこの2つの大きなトピックスを背景にして「ここぞチャンス到来」と言わんばかりに賑わっているのが、MVNOによる格安SIM市場でしょう。格安SIMの登場で、複数端末を同時に使い分けるといったユーザーも増えてくるはず。そんな中で発売に期待したいのが…

新料金プランの登場でかえって複数回線同時利用が増えた

7月3日に掲載した筆者コラムでも3キャリアの新料金プランについて触れ、結論として音声通話発信専用にガラケーを復活させ、月額2,200円で通話し放題の回線を持ちつつ、あとはMVNOの格安SIMを併用してスマホやタブレットをデータ通信専用と割り切って使うというオチをご紹介したわけですが、おかげさまで毎月支払う通信料はだいぶコストダウンできるようになりました。

筆者は携帯電話黎明期から、基本的に全てのキャリアの携帯電話を契約し、様々な場所での各キャリアの電波状況や使い勝手などを使い比べてきました。もちろん、どんな場所でも確実につながる状態を作っておきたいという目的もありました。たとえば都心部であっても、たまたま基地局と建物の位置関係の都合で、NTTドコモが圏外になってしまうけど、同じ場所でauだったら使える、といったシチュエーションがあるわけです。時代は「確実に電話を受けたり掛けたりできる」という使い方から「確実にインターネットに接続して情報閲覧や情報発信ができる」へと変わりましたが、今でも同時に多数の回線を契約し、それらの端末を鞄に詰め込んで仕事に勤しんでおります。(これが肩こりの原因ともいう)

デスク横のスマホ充電スペース

自宅デスク横にはスマホ充電スペースが。実際にはこれ以上の端末が控えております

話を元に戻しますが、やはり月額2,200円(スマホであれば2,700円)で通話し放題という安心感は計り知れないものがあります。発信用メイン回線はまずはこの契約で1本キープしておくべきですね。データ通信のほうは従量制となってしまいましたが、これも既存の複数のスマホ用回線契約を、パケット使用量を意識しながら上手に使えば、旧料金プランを維持したスマホ回線の使いまわしで十分にデータ通信を利用できます。今後、旧プランの維持ができなくなったとしても、MVNOによる格安SIMの価格競争が激化していけば、それらの組み合わせによって、比較的安価に、不都合なくスマホやタブレットをあれこれ試しながら維持していくことができるでしょう。

今、一番欲しいのがデュアルSIM端末

しかし、ご覧の通り、たくさんの端末を持ち歩くのは、最近ではやや面倒になってきました。スマホ端末自体が大型化してきたこともあり、鞄の中で結構なスペースを占めてしまいます。また契約期間の都合で、発信用に契約した2,200円の「掛け放題回線」と、名刺に電話番号を入れている「着信用メイン回線」とが現状は別々のものとなっているのも面倒な要因になってまして、外出時における最低限のセットでも、2回線だけは確実に持って出かけなければなりません。

そんな中で、今、一番欲しいと感じているのがデュアルSIMスロットを装備したスマホです。デュアルといわず3スロット以上あってもいいかもしれません。

デュアルSIMは、中国では携帯電話の時代から当たり前のように販売されていて、以前からうらやましいなと思っておりました(残念ながら当時のそれはGSM方式のみでしたので、買って帰ってきても日本では使えないわけです)。昨今の中国市場では、デュアルSIMスロットを備えたスマホも数多く出回っているそうです(このあたりは別途コラムを執筆されている山根康宏氏が非常にお詳しいです)。

一方、わが国では通信キャリアが自社のブランドで携帯電話やスマホを回線契約とセットで売るという商慣習が永らく続いて来ましたので、当然のことながらデュアルSIMという製品は通信キャリアの事業戦略上登場し得る環境にありませんでした。かつて「2in1」というような1枚のSIMカードしか挿入できないものの、2つの電話番号を同時利用できるサービスも無いわけではありませんでしたが、当然のことながら他のキャリアで契約した回線を同時に使うというものではありません。

しかしながら徐々にではありますが、わが国でもデュアルSIMスロットを備えたスマホが入手できるようになってきました。iPhone 5cをそっくり真似して話題になったイオシスの「ioPhone 5色」もデュアルSIM機でしたし、先月末に台数限定で販売されたFireFox OSを搭載した「Flame」も、正式に日本の技適を通してあるデュアルSIMスマホです。しかし、どちらも残念なことに、せっかく2枚のSIMカードを挿入できるのですが、3Gの2回線同時待受には対応していません。中国での一般的な仕様のままなのか、2回線同時利用の場合は、片方のネットワークはGSM方式に限られてしまうのです。世界では、通話用の回線をGSMとし、データ通信契約を伴った3G回線も同時に使用するときに便利なスマホという位置づけなのでしょう。

2つのSIMカードスロットを備えたスマホ

2つのSIMカードスロットを備えたスマホも徐々に身近に。ioPhone 5色(右)と、Flame(右)

日本クオリティで中国製造の独自スマホを日本国内で安価に販売することを目指されているfreetelさんではいよいよ3G+3Gで利用可能なデュアルSIMスマホ「freetel nico」をまもなく発売開始されるようですが、スペックを見る限り「スイッチング」と記載されているので、残念ながら同時待受は不可と見ました。

かつて2008~9年頃にわが国でSIMロック解除に関わる議論が白熱したとき、じつは通信キャリアのみでなく、国内各端末メーカーもSIMロック解除に猛反対したため、SIMロック解除が先送りされてきたという話がありました。しかし、現在総務省の検討会で進められているSIMロック解除義務化の検討においては、事前のヒアリングで各端末メーカーとも異論は出していないということでした。これは各メーカーが、通信キャリア依存の従来の製造販売スタイルから脱却を目指そうということと筆者は受け取りましたが、そうであればこそ、ぜひ日本では実現されてこなかったデュアルSIM端末の登場にも期待したいものです。

デュアルSIM端末は、中国製の安価なスマホみたいなイメージも付きまといますが、そうではなく、ハイスペックなデュアルSIMスマホを国産メーカーにしっかりと造ってもらいたいというのが本望です。SIMフリーのメーカーブランド版として、国内の全キャリアのLTE周波数にも対応しつつ、異なるキャリアのSIMを入れても同時待受可能なスマホ、そんなものが登場してきたら嬉しいなと思います。もちろん、VoLTEにも対応したデュアルSIMガラケーの登場にも大いに期待です! …って、無理な妄想でしょうか(笑)

ビジョン社の海外用Wi-Fiルーターレンタルサービス

ビジョン社の海外用Wi-Fiルーターレンタルサービス「グローバルWiFi」の「ヨーロッパ周遊 データPLUSプラン」で使われるこの端末はなんとSIMが10枚も(1枚は制御用)挿入できる! 世界にはこんな端末もあるんです。フィンランドのUROS社とビジョン社が共同でソリューション開発

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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